医師国家試験問題解説

海外旅行後の下痢と粘血便

104I66
A
B
問題のキーワード

海外旅行、2か月前、下痢、粘血便

選択肢を検討する

画像Aでは大腸壁のびらん、浮腫を認める。Bでは偽足を出しているアメーバを認める。大腸炎を引き起こすアメーバは赤痢アメーバである。その合併症を問う問題。

△a.稀に脳に膿瘍を形成することもある。

〇b. 赤痢アメーバは大腸粘膜を破壊して血行性に肝臓に到達し、肝膿瘍に至る。

×c.全く関係がない

×d. 全く関係がない

×e. 溶血性尿毒素症候群は腸管出血性大腸菌EHECなどでみられる合併症である。大腸粘膜を破壊して粘血便を伴うことがあり、Bの写真が分からなければ迷う選択肢。 

正解

b. 肝膿瘍

現場で役立つ知識
  • 現在、アメーバ赤痢、アメーバ性肝膿瘍の患者の半数以上は日本国内で、性的接触により感染したと推定されている(性行為感染症→他の性感染症の検索が必須)。また患者の9割が男性。
  • 肝膿瘍の半数以上は大腸病変がない、身体所見に乏しく、見逃し注意!
  • 治療はメトロニダゾール(アメーバの栄養体を殺す)とパロモマイシン(嚢子を殺す)を両方投与する。
  • 膿瘍は多くの場合は肝臓だけだが、稀に脳や皮膚に形成することもあるため、病変の検索が大切。
  • 膿瘍は治療のためのドレナージが不要な場合が多い(大きさや部位による)。

ABOUT ME
清水 少一
産業医科大学医学部 免疫学・寄生虫学 講師/ 医師、博士(医学)、感染症・総合内科・産業衛生のトリプル専門医。 Researchmap https://researchmap.jp/show1