医師国家試験問題解説

山菜を採りに行った後の発熱

113A51
113A51図
問題のキーワード

頭痛、発熱

2週間前に山菜採りに行った

耳介に水疱(?)

(おそらく経口3世代)セフェムが無効

発熱三日後から皮疹

結膜充血あり

口腔粘膜異常、項部硬直、リンパ節腫脹なし

体幹に小丘疹

白血球減少、血小板減少、肝胆系酵素上昇、CRP上昇

腎機能、CK正常範囲

どんな疾患/病原体を想定するか

山野での活動+発熱+皮疹(+セフェム無効)で想定すべきは

  • ツツガムシ病
  • 日本紅斑熱

ツツガ虫病:ツツガムシ(体長0.7mmの小さなダニの一種)で媒介。皮疹は体幹が中心

日本紅斑熱:マダニ(体長3-5mm)で媒介。皮疹は四肢に多い。

耳介の水疱(?)(問題の写真)はダニの刺し口(刺された後に痂皮化した状態)である。ツツガムシ病、日本紅斑熱の双方で出現する。現実には探すのが難しく、脇や鼠径など汗が出やすい部位に見られることが多い。

選択肢を検討する

診断として最も考えられるものを選ぶ

a デング熱:山野よりもむしろ都会に多い。蚊(ヤブカ)によって媒介。全体に広がる紅斑がでることがあるが、丘疹にはならない。日本での発生はまだ稀。問題で記述されていないが、海外渡航歴を確認する必要はある。

b マラリア:日本では現在発生していない、デング熱同様に海外渡航歴を確認する必要はある。皮疹は出現しない。(皮疹はマラリアを否定する所見の一つ)

c ツツガ虫病:特徴が一致する。実際には病状は多様で、問題の症例にはない、無菌性髄膜炎(項部硬直あり)や腎障害、リンパ節腫脹を伴うこともある。

d伝染性単核球症:咽頭炎、リンパ節腫脹、皮疹、異形リンパ球を特徴とする。kiss病ともいわれ、若年者に多い。

e レプトスピラ感染症:動物の尿に細菌が排出され、汚染された水との接触で感染する。日本で見られるのは、河川でのレジャー、汚い卸売市場で感染する症例である。典型的な症例は、結膜充血、下肢の筋肉痛および把握痛、CK上昇、悪化するとビリルビン上昇や肺胞出血を伴う。

答え

c ツツガ虫病

現場で使えるポイント

・患者の行動歴を聞かないと診断にたどり着けない

・実際には刺し口の痂皮や血液からPCRで診断する。教科書的には血清抗体価で診断することになっているが、時間もかかるし、血清型が限定されるため診断精度が低いのが難点。

・髄膜炎、肺炎、腎炎といった重篤な合併症を伴うことがあり、逆にその多彩な病状で診断が困難になることもある。

・4類感染症なので保健所に直ちに届け出る

ABOUT ME
清水 少一
産業医科大学医学部 免疫学・寄生虫学 講師/ 医師、博士(医学)、感染症・総合内科・産業衛生のトリプル専門医。 Researchmap https://researchmap.jp/show1