医師国家試験問題解説

治らない全身のかゆみ

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  • ステロイドに抵抗性の全身の掻痒
  • 介護職員
  • 手掌に線状の皮疹

どんな疾患/病原体を想定するか

全身のかゆみ+手掌の線状皮疹(疥癬トンネル)

=疥癬(ヒゼンダニ感染)

選択肢を検討する

対応として適切なものを選ぶ

×a 保健所に届け出る義務はない

×b 煮沸する必要はない。通常の洗濯で十分。

×c 通常の疥癬で個室管理は必要ない。

×d 通常の疥癬ではヒゼンダニは数匹しかいない。イベルメクチンの内服1回でほぼヒゼンダニを駆逐できるため、感染性は消失するため皮疹の回復を待つ必要はない(虫卵が孵化するのに合わせて1週間間隔で2回投与することもある)。

〇e この職員が施設に入所している他の人から感染した(させた)可能性があり、調査が必要。

答え

e 勤務先の職員と入居者に問診と診察を行う

現場で使えるポイント

疥癬トンネル(ヒゼンダニが掘った穴)は手掌や指間に認めやすい(他にも陰茎、陰嚢、腋窩などの柔らかい場所)

通常の疥癬ではヒゼンダニは数匹しか存在せず、かゆみはアレルギーによる。このため、初感染では感染後1か月程度は無症状であることが多い。

免疫不全患者ではノルウェー疥癬(角化型疥癬)を鑑別する必要がある

ノルウェー疥癬

大量のヒゼンダニ(数百万)が寄生し、皮膚の角化を伴う。免疫不全者にみられる病態。

感染力が高いため、個室隔離し、接触予防策をとる必要がある。

イベルメクチン内服が著効する。

皮膚のかゆみはしばらく残るため、抗ヒスタミン外用等も併用するとよい。

イベルメクチンが投与できない場合は、フェノトリンローション外用が有効。ただし、外用薬による治療では全身にくまなく塗布する必要があり手間がかかる。

ABOUT ME
清水 少一
産業医科大学医学部 免疫学・寄生虫学 講師/ 医師、博士(医学)、感染症・総合内科・産業衛生のトリプル専門医。 Researchmap https://researchmap.jp/show1