

アジ・イカの刺身を食べた後
バイタルは安定、腹膜刺激症状もなし
内視鏡で白い線状の物体を認める(画像の右下)
アジ・イカの生食後の腹痛 + 上部内視鏡で線虫
=胃アニサキス症
×a 他の食中毒と異なり、冬の方が”やや”多い。要因は「原因食材の保存上、寒い方が生食しやすい」、「原因食材が旬(脂がのっている=中間宿主をよく食べている)」など。ただし、年や食材によって大きくばらつくため、正確性に欠ける選択肢。
×b 報告は胃アニサキス症が圧倒的に多い。画像で一目瞭然に診断ができるからである。一方、腸アニサキスは食後数日経過しており、診断が難しい。つまり本当に腸アニサキスが少ないかどうかは分からない。
×c アニサキスは魚介類の肉や内臓に潜んでおり、食後消化に伴って食材から出てくる。つまり消化に必要な数時間+虫が胃壁に移動し宿主が反応する数時間=12時間以内に最も多く発症する。対して、多くの食中毒は病原体が増殖するのに必要な時間が潜伏期間になるため、1-2日後に発症する。(毒素型を除く)
×d プロトンポンプ阻害剤は胃酸の分泌を抑制し、胃や十二指腸潰瘍の治療に使うが、胃アニサキスの病態と無関係である。
〇e 即時型(I型)アレルギーによる好酸球性肉芽腫の形成が病態に関与している。
e 病態には即時型アレルギー反応が関与する。
アニサキス症の症状は強度がさまざまで、健康診断の内視鏡で、ほぼ無症状のまま見つかることもしばしば。
上部消化管内視鏡で虫を除去するのが唯一の確実な治療法。一匹とは限らないので、視野をくまなく見ることが必要。
夜間救急で搬送されるケースでは、症状が強くても、バイタルが安定、食事歴が明らかな場合は鎮痛や鎮静で、内視鏡ができる時間まで待機するのも手(アレルギーによる病態からデキサメサゾン静注が有効であったという報告も。)
診断した場合は、食品衛生法に基づいて食中毒として保健所に届け出る(直ちに、保健所長宛。)。このとき、正式な書類等はない(地域によってさまざま)ので、保健所にまずは電話するとよい。(感染症法の届け出はないので注意。なお感染症法の届け出先はあくまで保健所経由、都道府県知事宛。)